よりよく生きるための指針を自分で生み出すための考え方と方法の提案
呼吸という言葉は息を吸ったり吐いたりということですが、ヨガを含め心や体を意識して使う他の芸術や○○道といわれる芸道や武道においては、吸う吐くだけではない別の意味がそこに含まれています。
辞書を見ると、物事を行う微妙なコツ。調子。要領。という意味も書かれています。
呼吸が乱れるとか調うというときには、体も心も一体のその人全体の状態を指していますし、また、呼吸をつかむ、呼吸を会得する。というような表現もあり、呼吸というものがとても大切なものとして扱われていることがわかります。それは呼吸をコントロールすることが心と体のコントロールの鍵だからです。
普段は無意識に呼吸をしていますが、意識的にすることもできます。
無意識的な時には、呼吸は潜在意識の働きに支配されており、その意識の状態は呼吸の形や身体の状態として表れています。しかし、意識的に呼吸の形を変えると、それは身体の使い方を変えるということでもありますが、それまでただ無意識に支配されていた意識の状態を変化させることになり、心も体も変化します。この働きを使って、呼吸によって心のコントロールをします。
例えば喜んでいる時ような身体の使い方で呼吸をすると、心が喜んだ状態になり、悲しんでいる時のような心で呼吸をすれば悲しそうな身体の使い方になります。
体を変化させれば呼吸が変わり、心が変化すれば呼吸が変わる、呼吸を変えれば心も身体も変わる、というように、どこから入ってもこの三者を変えていくことができます。これがヨガの三密であり、ヨガをやっていくための大切なポイントです。
声のヨガ
声は呼吸のエネルギーを音に変えたものです。そのため、呼吸の状態が全て声に表れます。ということは、声を変化させれば呼吸の状態が変わり、呼吸が変われば心や体も変化するということです。声も私という全体を覗くための一つの断面、切り口の一つですから、当然のことです。
ヨガをするうえで、声にはもう一つ特筆すべき特徴があります。それは、声は他の人の耳にも自分の耳にも聞こえるからです。
当たり前のことだろうと簡単に考えないでください。例えば“目に見えるかたちにする”という表現があるように、呼吸というつかみどころのないものを”耳に聞こえるかたち”にしたものだということであり、これは呼吸を変化させたいと考えるときには大きな意味のあることなのです。
人の呼吸を外から見ていてどんな心の状態かを把握するのは難しいことですが、話している声を聞けば、喜んでいるのか嫌がっているのかがわかります。”目に見える”のと同じように、耳に聞こえる形になったからです。
ですから、私はいつも、”声は呼吸のバロメーター”と言っており、ヨガをしていくうえで、声をうまく使うことが出来るのです。ナチュラル ヴォイス ヨガはこれを応用したものです。
ナチュラル ヴォイス ヨガ
私たち人類の生み出す文化は自然の働きとは方向性が大きく違います。その中にあって、いかに生命の働きに沿った自然な心身で生きるかということを求め実践するのがヨガをするということです。そして、ヨガで自分を変えていくには、生命の働きの邪魔をしている心や生活を変えることによってよりよい生を実現していきますが、それは、自らを意図する方向に導くというよりも、生命の光が心身を通して自ずと輝くように生命の働きにまかせる生き方を選ぶということです。
お伝えしている体操法や呼吸法も、誰もが本来持っている生命の働きを活かすためのメソッドですが、そのメソッドで身につく働きそのものが目的ではありません。邪魔をしなければ、赤ん坊が伸びやかにスクスクと育つように、自身の心身が生命本来の働きを発揮できるような下地を養うことが目的です。それは、歳をとっても遅々とした歩みであっても、生命の喜びを感じるという光の方向に向くということです。
ヨガと発声の研究を音大生の時から続け、現在も実践と指導をしていますが、私の活動を「ナチュラル ヴォイス ヨガ」と名付けています。20数年前に立ち上げたトータル ライフ デザインという会の機関紙「和気愛会」の記事を通じて発表してきましたが、10年くらい前に同名の著作「本当の自分と出会う ナチュラル ヴォイス ヨガ」を発表しました。その後も日々少しずつ与えられる新しい考え方や方法の気づきを会報上で発表してきていますが、それらのヨガと発声法の観点からの「呼吸」についての記事を多くの方にも読んでいただきたいと考え、このリニューアルしたナチュラル ヴォイス ヨガのサイトでそれらを発表していきます。
今回は会報の連載記事の中から2019年以降のものを修正したり並べ替えたりの編集を加えて公開します。
今回は、呼吸コントロールのメカニズムのテーマで20話程度の話にまとめました。
原稿の原本は長く購読されている読者向けの連載記事の一部なので、普通には使われていない言葉がいきなり出て来ますが、読むうちに追々お分かりいただけると思います。ヨガについてあまりご存じでない方は、光文社発行の文庫本、沖正弘著「ヨガの喜び」や、拙著「本当の自分と出会う ナチュラル ヴォイス ヨガ」を読んでください。
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