2015.06.22
映画やお芝居、読書など自分の知らない世界を覗かせてくれる刺激は、少ない経験の中での自分本位な理解の範疇を広げてくれるのに素晴らしい方法です。
しかし、この「あん」という映画を見て感じたのは、知らない世界を知るという事よりも、いかに自分が自分と関わりのない世界を見ずにカットしてしまって暮らしているのかという事に気づかせてくれるものでした。
主な登場人物は、どら焼き屋の雇われ店長の男性、そこに通ってくる女学生、元ハンセン病だった老婆の3人。
老婆を樹木希林さんが淡々と演じているのですが、自分がハンセン病で辛い思いをしたという事を声高にうったえるのではなく、人はみなそれぞれ何か問題を抱えて生きている。
どの問題も本人にとっては大きなことで、その囚われの枠を自分で外せる時に道が開けるということを、言いたいのかな~という感じで、物語は進行するのです。
が、後は見る側の情報量と想像力しだいで、この内容が「深い」ものになるのか「どうでも良い」ものになるのかはお任せと云われているような感じがする映画でした。
演出の上手さなのでしょう。河瀬直美さん監督という事も見たいと思う要素の一つでした。
ハンセン病については昔どの様な扱いを受け、治癒した元患者さんたちが未だに帰る場所もない生活を余儀なくされているという事はテレビで観ていましたが、きっとその時はその身になるということをしていなかったのかもしれません。「酷い扱いをされたんだ、気の毒だ」という思いだけがのこっていました。
この映画では人の心情というものが呼吸として伝わり、その悲しさや、辛さがナマなこととして琴線にふれました。
この物語のかごの鳥(カナリヤ)も象徴的で大きな役目を担っていました。
籠、枠、塀、扉、等勝手に自分をその内側に入れてしまっていないか?
「自由なはずの誰もかれもが、がんじがらめの囚われ人?」人の思考の本質を考えさせました。
「こだわるな、とらわれるな、ひっかかるな」これが実現できれば本来の自分として自分の人生を全うできるはず。
ヨガの教えを改めておもいました。
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