自分らしく生きる生き方そのものが人を健康にする

NVY-intro28

ナチュラル ヴォイス ヨガ入門 28

 和気愛会 2016年6月号 (No.201)

 辻さんの主催で、6月にまた東京でセミナーを開きます。
 私の言いたいことは一貫して同じですが、表現を変えたり、新たな切り口で体験していただくことでより理解していただけることと思います。今回は実践しやすい呼吸体操を多くやりますが、まずはその体操の意味をお話しします。

 根本になるのは “喜びにあふれた姿勢”といういつも使っている表現です。

 この姿勢は、誰もが見ていて微笑ましい感じのする、幼い子供が伸びのびとしているときの状態を思い浮かべればよくわかることでしょう。

 外見の形ではなく、体の使い方の方向性の問題です。楽しく嬉しく、伸びのびとしているときには胸が大きく膨らんでいます。もちろん頑張ってもいません。

 悲しくてショボンとすれば肋骨は下がり萎みます。子供はそのどちらにも大きく動きます。大人になるとどちらの可動幅も狭くなってきます。

 心のコントロール力で萎まないようになるのなら素晴らしいことですが、心を固め体を固めてはいないでしょうか? 膨らんだまま固まっても萎んで固まっても自律神経の働きには偏りが生まれやすいことでしょう。

 最近増えてきているややこしい病気の多くが自律神経の働きの偏りによるものといわれています。 とはいうものの、大人は必ずそうならなければならないわけではありません。子供のように、どちらにも動くことのできる幅を大きくすることは歳をとってからでも可能なことです。

 その上に、悲しい時も寂しい時も背筋を伸ばし高い肋骨を維持し、行動力を削がず、自他を慈しむことができ、物事に正しく接し、正しく対処できるという、大人としての能力を保ちながらその姿勢を維持することができるはずなのです。

 子供のような柔軟な体と純真な心を持ちながら大人でいることはできないことなのでしょうか。

 そんな理想的なことを言ったって・・・、と思う方も考えてほしいのです。理想に向かわなければ私たちは何に向かって生きればいいのでしょうか?

 もちろん自分の目指す将来的な理想をみんなが持っていることでしょう。しかし今この瞬間の自分の状態の理想を追求する人は多くはありません。

 今の心、今の体、今の呼吸が理想的に良い状態で生きるということの連続こそが、最高の生を全うするという、大きな観点での切り口ではないでしょうか。そして、今の自分が元気で喜びに溢れていることこそが、最高の能力を発揮し、将来の目的を実現するために一番必要なことではないでしょうか。

 幼子のようになりなさいとイエスは言いましたが、いつもそのように生きるならきっと喜びにあふれた生活を取り戻し心も体も若返ることでしょう。

 真底心が開かれれば体も開く。体が真底変われば心も変わる。 きっとそうでしょう。 でもそれをどちらからであれ自分が変革するまで徹底して実行するのは大変に難しいことです。

 なぜ難しいか。それは、心が心を見て心を変えていくということそのものが、自己変革の目的の一つであり、達成すべき 難題の一つだからです。

 また、心が納得しないままで体の使い方を変えていき、子供のように解放された心身を得ようとしても、心が安心していない状態ではどうしても実現できないところがあるのです。

 どちらからのアプローチもそんなに難しいのならいったいどうすればよいのかということですが、それこそがヨガが説く大切なところです。

 心・体、そしてそれをつなぐ呼吸という三つから同時にアプローチするのです。そうすることで2倍3倍ではなく2乗3乗に達成しやすくなるのです。

 私はこのことを若い時に教わったおかげで、自分に甘い怠け者の ままでも、多くの真実を体得させていただくことができました。

 体が伸びのびとした使い方をしていないと、そのうち、そのための筋肉がだんだんと弱り、退化し、萎縮し、固くなり、まるで忘れてしまったかのようになってしまいます。こうなるとちょっと心の状態を変えてみたくらいでは体の使い方まで変化するような変革は生じなくなります。

 心の使い方についても同じです。 例えば、不安を持つ、嫉妬や怒りに支配される、というような心そのものを変えたいと思って成功する方がどのくらいおられるでしょうか。もちろんそれは不可能なことではなく、多くの方がそれを成し遂げたことでしょう、でもそれが難しいからこそ世の中でもめ事が絶えないのです。

 自分を変革していくための間違いない方法は、心の状態を変えたければ呼吸を変え、呼吸を変えたければ体の使い方を変え、体を変えたければ心の使い方を変える・・・・・・。

 この三つの切り口で自分を見つめ、それらが互いにより良い変化をするようなアプローチをするのです。

 それでは、子供が伸びのびとした(心の)状態で息を吐く(呼吸)ときには、どんな吐き方(体の使い方)をしているでしょうか? これを研究して自分のものにすれば大きな問題が一つクリアーできると思いませんか?

 体からのアプローチとしてはこのような肋骨の使い方を体に教え込むことが必要です。 そして肋骨が高く楽に拡がっている状態を、起きて活動しているときの標準にしなくてはなりません。

 その上に、その時にどのような呼吸をしているかを感じ取ることが大切です。

 肋骨が高い状態で息を吐くということは、肋骨を萎ませないということです。 もちろん全く肋骨が動かないというのではなくて、肺の容積を減らす主体になる動きが肋骨なのかそれとも別の働きなのかということです。

 肋骨を萎ませないということは、内臓が肺の側に引き上がり、肺の容積が減って、息が押し出されるのです。

 肋骨がより高い状態で息を吐くためには、内臓を押し上げる働きがより多く必要になります。内臓そのものは自らは上がりませんから、体幹と四肢、そしてそれをつなぐ色々な筋肉がその仕事をすることで実現できています。

 その動きの中で一番わかりやすいのはお腹が引っ込むということです。 しかしそれだけではまだ足りません。お腹が引っ込みそれが上に引き上げられる。そしてその働きに全身が協力しているときには、肛門が締まり、背筋が伸びているが重心が下がり安心した体の使い方をしているのです。

 直立しているときならこれがターダアサナ(山のポーズ)、基本姿勢です。

 次に、息を吸うときには引き上げたお腹の内容が下がることで肺が陰圧になり、勝手に息の方から流れ込んできます。この時に体が伸びたまま内容が十分に引き下げられる状態は、心が安心して地球の中心に自分の体重を預けるような心でないと体の底から息が十分に流れ込んでくるという入り方にはなりません。

 これで、吐く息に力が籠り、吸う息には力を籠めないという自律神経の安定のための最高の呼吸ができます。

 次に、より喜びにあふれ溌剌とした状態を維持するにはこの意識だけでは不足で、肺の最上部にまで息が十分に入ってくることが必要です。これには多くの人にとって、もう一息強い訓練が必要でしょう。

 より心が広がり肋骨が広がり、気持ちの良い息で体が満たされるためには、意識的に背中の上部や胸の上部に息を取り入れ、もっと上に息が入ってくることが必要です。

 感覚的には鎖骨のあたりから首にまで入るように感じられます。そしてその肋骨の使い方を自分の常態にまで馴らすためにその息を保ったまま息を止めるのです。

 吸う力を使って息を維持するのではなく、喉で詰めるのでもなく、まるでなにもしていないかのように楽に振る舞い、放っておいても、口を開けても喉を開けても声を出しても、息が勝手には出ていかない状態を維持する力を養うのです。

 これがクムバク力です。 そしてこれを養うためにクムバク体操が役に立ちます。

 さて肋骨を高く引き上げたり息を吸い入れるにはそれなりの力が必要ですが、ただ高くまで息を入れるというだけでは体にも心にも緊張を引き起こします。

 ただ吸ったままで息を止めるだけでは害になります。それは決して喜々として生きている呼吸ではありません、それではどうすればよいのか。そこで大切なのが肋骨の引き挙げ方です。

 私たちが喜々として生きているときに肋骨は高くなりますが、肋骨を引き上げようなどと考えて力を込めてはいません。ではなぜその時には勝手に肋骨が引き上がっているのでしょう。その鍵が背骨にあります。

 喜々としているときに背中が緩んで丸くなったり肋骨が下がったりするでしょうか?

 そう、背骨が伸び背骨に力が籠るというのは肋骨が引き上がることなのです。それなら背骨をただ伸ばせばいいのでしょうか? いや、決してそれだけではうまくいかないことでしょう。

 私たちの体も心も複雑怪奇、そう簡単にはいうことを聞いてはくれません。そこで、上手に体を誘導して達人の呼吸にまで持っていくテクニックが必要なのです。

 それは大きく息を入れた後、肋骨を引き上げる働きを背骨にバトンタッチすることなのです。この使い方に慣れると、吸う息吐く息に支配されることなく肋骨の高い、喜々とした状態を維持できるようになるのです。

 肋骨の引き上げを背骨に渡したときは、吸うことも吐くことも止めることも、肋骨だけの作業ではなく全身が協力したデリケートな呼吸ができます。そのため、心が安定し座禅瞑想の呼吸、そして良い声の呼吸になるのです。

 この作業、肋骨の引き上げを背骨に任せるためにクムバクの作法が役に立ちます。

 動作としては、息の十分に入った状態で、肛門を絞め、下腹を引き、頭頂が天に伸び、首を伸ばし力を抜き、息の圧力を全身に均等に分配するように息を調和させます。

 最高にたくさん息が入った状態でこれらの作法を行って息を止める。ここで多くの人にとっては苦しさが生じます。それは背筋が十分に伸びて肋骨が広がるという状態になれないからなのです。この息を、背骨の力にバトンタッチし、全身で受け止められるようにするのがクムバク体操です。

 拙著 ナチュラル ヴォイス ヨガの P127 あたりから読めば初歩のクムバク体操のやり方をある程度詳しく書いています。
 これが当たり前にできるようになっていると今回の講座の呼吸法がとてもわかりやすいことでしょう。



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