沖先生の思い出

沖先生の冥想指導 3

  最初は厳しくて耐えられないと感じた道場生活も回を重ねるうちに身体も心も適応力がついて、随分居心地の良くなってきていたある時の冥想行法の時間、このときも円座になり ローソクを囲んでそのゆらめく炎に集中していました。すると、「右か左か!」と大きな沖先生の声が聞こえました。

 何をしているのだろうと、炎への集中を忘れて先生の挙動に意識を向けましたが、先生の姿は見えません。そしてその受講生が「左!」と答えた途端、バシッと竹刀で叩く音がしました。きっと肩のあたりに警策のような一撃をくれたのでしょう。

 「え~っ、また竹刀でビシバシだよ」と思いながら次の人の姿は見ることが出来ました。
 「右か左か」と言いながら、竹刀の切先が、座っている受講生の肩の辺りにスーッと静かに降りていきます。先生は後ろに立っていますから、その人に竹刀の切先は見えません。「右ッ」という声に先生は「ヨシッ」と応え、また次の人に竹刀を降ろしていきます。

 これはえらいことになった、当てものなら五分五分の世界です。当たらなければバシッが待っている。よし、何が何でも当ててやるぞと、もう一度ひたすらローソクの炎に意識を向け、呼吸を調え、私の番を待ちました。結構ビシバシと叩かれる音がしていましたが、とうとう沖先生が私の後ろに立ったので、すぐに竹刀を降ろしてくるだろうと息を止めて待つことしばし。

 とても長い時間に感じられましたが、真後ろで「右か左か」と声がしました。目を開いたまま後ろの情景を見るように強く意識を向けると、右の耳から肩のあたりに何かを感じました。すかさず「右ッ」と叫ぶようにいうと、「ヨシッ」と返ってきました。

 ああよかった、姿勢を崩さず表情も崩さずただそのままホッとしたことを憶えています。集中力を高めよとか、感知力を高めよと言われていることそのままの訓練でした。見えないものをただ感じることができたのか、それともわずかな空気の動きを感じ取ったのか、それともそれを見ている他の人の意識を感じ取ったのか、よくわからないところもありますが、はっきり「右」と断言できる感覚がありました。

 その世界を特には追及してはいませんが、以来、後ろの気配を感じることが多くなったのは事実で、見えない世界の方が見える世界よりもずっとずっとたくさんあってその中で生かされている自分なのだろう、と思うようになりました。

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