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呼吸コントロールのメカニズム

呼吸コントロールのメカニズム

和気愛会連載
NVYナチュラル ヴォイス ヨガ 入門   2019年
~ 呼吸コントロールのメカニズム ~ 

(小冊子としてまとめたものを そのままアップしました)

 この小冊子はトータル ライフ デザインの月刊会報「和気愛会」に連載中の「ナチュラル ヴォイス ヨガ入門」の ~呼吸コントロールのメカニズム~ 2018年12月号と2019年1年分の記事から抜萃、改変してまとめたものです。
 これは、ヨガと発声法の観点から呼吸についての 私の見解や気づきを発表してきたものです。心身を見つめ、よりよく生きるための指針を自分で生み出すための考え方と方法の提案です。書いてからある程度時間が経っているので、順番を変えたり修正を加えたりしました。原本が一回ごとに完結したランダムな記事なので重複したところが多々あります、ご容赦ください。 
 今回は2019年の分だけで、2020年の分は少し時間をおいてから編集したいと思っています。
 呼吸は多くの道につながる鍵になるので、道を求める方の参考にしていただきたいと思います。 まとめる端から気づきがあり、書き加えていますが一度切りをつけて公開することにしました。
 長く購読されている読者向けの連載記事の一部なので、普通には使われていない言葉がいきなり出て来ますが、読むうちに追々お分かりいただけると思います。ヨガについてあまりご存じでない方は光文社発行の文庫本沖正弘著「ヨガの喜び」を、また、拙著「本当の自分と出会う ナチュラル ヴォイス ヨガ」を是非お読みください。
 私たち人類の生み出す文化は自然の働きとは方向性が大きく違います。その中にあって、いかに生命の働きに沿った自然な心身で生きるかということを求め実践するのがヨガをするということです。そして、ヨガで自分を変えていくには、生命の働きの邪魔をしている心や生活を変ることによってよりよい生を実現していきますが、それは、自らを意図する方向に導くというよりも、生命の光が心身を通して自ずと輝くように生命の働きにまかせる生き方です。
 お伝えしている体操法や呼吸法も、誰もが本来持っている生命の働きを活かすためのメソッドですが、そのメソッドで身につく働きそのものが目的ではありません。邪魔をしなければ、赤ん坊が伸びやかにスクスクと育つように、自身の心身が生命本来の働きを 発揮できるような下地を養うことが目的です。それは、歳をとっても遅々とした歩みであっても、生命の喜びを感じるという光の方向に向くということです。
 ナチュラルヴォイスヨガも本来のヨガが根本に据える「心・身体・呼吸」の三密を基本としていますが、『身体の使い方の方向性』と『声による呼吸の把握』という二つの切り口からの呼吸の体得、心身息の調和を図ります。この記事では考え方が中心になっており、できれば実技も掲載したいところですが、実技を言葉でお伝えすることは難しく、また、DVDやyoutubeのような一方通行の媒体でも正しく伝わるとは考えられないので、セミナーや個人指導だけでお伝えしてきています。 コロナのためにやむなく始めたZOOMレッスンは対面レッスンのようにはいきませんが、それでも工夫と慣れでずいぶんと伝わりやすくなりました。また遠方の方との距離に関係なくやり取りができるようにもなりました。これならある程度実技も伝えられそうなので、当分はこれを使ってのレッスンを続けるつもりです。
 この1年近く、ZOOMも会員の方だけを対象にしてきましたが、新しい方が参加しやすい枠を作ろうと思いますので、やってみたい方は連絡を下さい。
 自分を活かし、自分らしい呼吸を身につける呼吸法や呼吸体操を是非一緒に学んでいただきと思います。
 体感空間を生み出す元になる「呼吸の拮抗」の  体感覚を理論と実践で体得し、また、難しい面もありますが、母音メソッドを使った快い呼吸の声のレッスンも実現していきたいと考えています。そしていつの間にか深い呼吸ができているような身体作りを目指します。

この冊子をこのまま拡散していただくことは問題ありませんが、部分引用の場合はご連絡ください。
また翻訳も歓迎しますが、無断公開はお断りします。作者との事前の打ち合わせや校正が必要です。
質問やZOOMレッスンについても下記にお問い合わせください。
HP : ナチュラル ヴォイス ヨガ で検索
URL1: http://www.tld.co.jp(ナチュラル ヴォイス ヨガ) URL2: http://tld.tld.co.jp (トータル ライフ デザイン)
問合せ・連絡先:s_kim@tld.co.jp 木村周平           制作:トータル ライフ デザイン 木村周平

~ 呼吸コントロールのメカニズム 1 ~ 
呼吸の働き

 ヨガでは多くの呼吸法が伝えられていますが、それらは何のためにやるのでしょう。色々な観点が考えられますが、ヨガの目的に思いを巡らせるなら、その一番の焦点は、常に安定した深い呼吸のできる能力を養うというところ、すなわち「呼吸のコントロール力を養う」ためにあることでしょう。 ただ吸ったり吐いたりではなく、意識が広く深くなるような心身の使い方を呼吸によって生み出すことに意味があるからです。
 この「意識が広く深く」というのは、心が広く身体がゆったりと和らいだ、「体感空間」が広がっている状態と言い換えることができます。そのような呼吸が健康度にも精神生活にもまた快く豊かな声がでるのにも一番大切なものです。 また、この「体感空間」は肋骨と横隔膜が創り出す精妙な意識であり、ここを求めて呼吸法を行うことでヨガを深めることができます。
 また、呼吸は意識的にも無意識的にもできるので、無意識の働きを意識的にコントロールする鍵にもなります。呼吸を意識的に深く保つことによって心の豊かさや自律神経の安定を保ち、また自分らしい良い声を育てることも出来るようになります。 でも、ただスーハーと呼吸を長くしたり強くしたりしてもコントロール力が身につくわけではありません。まずは私たちの呼吸が本来どのように行われているのかを知って正しく取り組む必要があります。
 これまで、呼吸のために使っている肋骨や横隔膜、その他多くの器官の働き方について納得できるような体験に基づいた考察を見たり聞いたりしたことがありませんでした。 でも、長年の研究をするうちに深い呼吸を手に入れるための私なりの気づきを得ることが出来たので、それを実践方法とともに紹介するために奮闘しているところです。 それはアカデミックな理論ではありませんが、呼吸は拮抗する働きで成り立っているということです。
 拮抗の働きは身体の中の色々なところで行われています。
それは外的な刺激が変化しても体内の状態を一定に保つために必要な働きで、血液の状態や自律神経の働きでも行われています。 無くなったら足す、増え過ぎれば捨てるという タイプのコントロールもありますが、そんな誤差の多い方法では恒常性を保てません。 相反する働きを常在させておいてその働きの程度で拮抗度合いを変化させることで、精密な コントロールが可能になります。 筋肉の働きでも同じで、行きすぎたらやめて反対を働かせるというような雑なコントロールだと踊りどころかスムーズに歩くことさえできません。 呼吸も精密にコントロール出来るように身体は作られていますが、 その機能を充分に活かして使っている人は僅かです。 一芸に秀でた達人といわれる人たちはその働きを使いこなしていますが、本来は誰もがそのような能力を発揮するための機能を与えられているのに、歌を忘れたカナリアのようにそんな使い方は出来ないと思い込んでいるように見えます。
 さてその拮抗が呼吸の中でどのように使われているか、本来はどのような使われ方をしているはずなのか、それを「三つの拮抗」という考え方で説明します。

三つの拮抗
1. 肋骨と横隔膜の拮抗(息を吸う働き)
(「吸う働き」というよりも、息の入ってくることのできる空間
 を開き広げておく働き)

2. 横隔膜と肛門・骨盤底筋群の拮抗(腹圧を生む働き)

3.「吸う働き」 と 「吐く働き」の拮抗

 大きくとらえたこの拮抗が働いてこそ本来の良い呼吸になります。 次の記事で詳しく説明しますが、この拮抗が無くても生きてはいけます、しかし神(自然)に与えられている生の質を 高め、より活かすにはこの働きを是非取り戻すべきです。

 呼吸をするには肺の容積を大きくしたり小さくしたりしますが、これがそう単純ではありません。
 走ったりした後の呼吸は多くの酸素の供給のために、胸郭を大きく広げたり萎めたりの呼吸をすることもありますが、広く深い呼吸と意識を維持している平常時には胸腔が広がる 働きを持ったまま、息を吐くことができます。 もちろん、胸腔の容積が減らなければ息は吐けませんが、広がる働きと、吐く働きとが拮抗することでコントロールされた呼吸を生み出します。 しかし、心が乱れているときや、姿勢が緩んだり崩れたりしているときには拮抗した呼吸の状態にはなりません。
 活動していても静かにしていても、気持ちがゆったりと大きいときには、背スジの伸びる働きで肋骨が高く拡がり、それに対して横隔膜が下がることで胸腔が拡がります。そしてこの 拡がりを生み出す拮抗の方向性が「体感空間」というイメージ空間を生み出します。
 バレエやフィギュアスケートの演技者たちが手を大きく動かして表現をしますが、その手がただ動いているだけのつまらない演技をする人と、より大きな空間にイメージを描き出す感動的な演技をする人がいます。 後者は全身で自身の感じている「体感空間」を表現しているのですが、この空間は息を吐いても狭まりません。良い演技者は、胸郭を挙げる働きと横隔膜を下げる働きとで息の入ってくることのできるスペースを常に広げようとしており、その働きに対して息を吐くための別の筋肉群が働くという第3の拮抗によってコントロールしながら息を吐いているのです。このとき、吐くことを止めれば息は自ずと第1の拮抗によって広がろうとしている胸腔に流れ込んできます。この広がろうとする働きが体感空間を生む働きの原動力です。
 この呼吸コントロールは歌手や楽器の演奏者、舞踏家たちの演奏・演技に明確に表れています。また、沖先生の説かれた冥想、動禅、座禅瞑想、多くの武道や芸道、多くの宗教での修行、そして儀式や礼拝など、呼吸コントロールを必要とされるところでは、目立たなくてもこれが強く働いています。
 この広がる方の吸う働きと吐く働きとが拮抗し合い、広がる働きを失わないまま声を出したり生活や仕事をする、ということが出来なければ、常に心を豊かな状態に維持することは出来ません。この広がりが失われたときに心が萎むからです。 体感空間の広がりは心の豊かさなのです。 また、西洋音楽の声楽に限らず、発声法の原点もここにあります。この呼吸コントロールがプラティヤハラのために絶対に必要な条件であり、このためにこそ、これを可能にするための身体の使い方を覚える、アサナやプラナヤマがあります。 
 当然のことですが、良い呼吸はこの三つの拮抗だけで完結できるわけではなく、どれもが働けるための足場を生み出すために、全身の協力体勢が必要です。
 肋骨が高く広がるためには背スジが伸びることが必要。そして横隔膜がそれに対して拮抗して働くには足腰やお腹の協力が必要。 これらは、人間が重力に逆らって伸びるという進化をし、全ての活動する機能を伸びるという働きと共に身につけているため、重力に対し天に向かって伸び、地に向かって押し伸ばすことが人間にとって当たり前のことであり、これがその他の作業の足場を作るための体勢だからです。 これらの働きを統一し、一つのこととしてまとめる使い方を身に付けることが丹田(肚)で動作するということです。 その上に声をよく響くようにするには、気道を広く保ったり、喉頭部や咽頭部を最適の位置に懸垂する必要があります。 また、心が広く豊かな状態を維持するには、入ってくる刺激や情報をありのままに受け取ることができるような頭脳や心の力も必要です。これも人生をかけて手に入れるべき大事業ですが、身体や呼吸が豊かさと反対を向いればどうしようもありません。
 全てを通じて心身息を統一してこそ目的に向き合うことが出来るはずです。

 このような沢山の個別の働きや、それらを統一して働くようにする大変なトレーニングをいったいどのようにすれば実現できるのでしょう。 ヨガの掲げる目標が遠くかけ離れた世界に見えたとしても全く不思議ではありません。
 たしかに、このような働きを個別に養ってそれを統合しようとするならそれはとてつもなく難しい作業になることでしょう、しかし、それらの働きや機能は本来生まれながらに誰もが持っているものですから、その基になる原理に従って必要な働きを養うことで、後は生命がそれらをまとめて働くようにしてくれます。
 ヨガの八段階はその原理の骨格を説くものであり、そこに 到達するためのマップであり、進む方向まで書かれています。ここに書いた拮抗も原理に従って順を追ってやれば正しく身につけることができます。 ただし、ヨガのマップは全体を見てこそマップになるのであって、部分のアサナやプラナヤマだけを取り出してもそれはヨガにはならないし、目標に到達することもありません。 その原理は簡単な言葉で表現できるし、なんだそんなことかと思うようなことかもしれません。しかし、その簡単そうなことが忘れられているために、文明度が高く豊かそうに見える社会に暮らす人々の健康度は低く、殆どの人が病気になり、苦しんで死ぬ。 精神的健康度も低く、自殺する人が多い。 文明と共に戦争や殺人が減るならまだしも、人間心を養うことすら忘れられている。
 人間には5千年も前から求めるところがあったからこそヨガが生まれ、現代に受け継がれているけれど、5千年もの間人間としての進化をせずにいるからこそ現代においてもヨガはかけがえのない大切なものなのです。

 それでは、その原理の一つをお話しましょう。 それは、『どんな時にも、伸びやかに高らかに笑っているような呼吸をし、それを常に維持する能力を身につける』ということです。
 なにもいつも大きな声で笑えということではなく、笑っているような呼吸の状態を維持すること、これこそが最初に述べた、三つの拮抗が有機的に結び着いて呼吸のコントロールをしている状態です。
 ただ笑うだけではそれだけのものでしかありません。大切なのは、その『大らかな笑いと生活の全てを結びつける』ことです。
 ここにサマーディがあり、ヨガをする人はここを求めてこそアサナやプラナヤマを自身の進化に貢献させることができます。このサマーディを見ながら生きるということをしないなら、いくらヨガをしてもそこには本質的な目標がなく、進むべき道が開いてくることはないでしょう。 
 沖先生は、八段階目のサマーディの上にブッディ (仏性開発)、プラッサード(歓喜法悦)というヨガの十段階を説かれています。 難しそうですが、ヨガは特別なことを言っているわけではありません。 生きるということを追求することで生まれてきたものですから、誰にとっても身近なもののはずです。 ヨガの用語は千年も二千年もの前の生活や当時の科学とともにあった言葉です。現代に生きる私たちは言葉そのままを鵜呑みにせず、一つ一つの言葉を自身の体験で翻訳する 必要があります。 自身の生命の声に従って生きること、そしてその声を訊くためにはヨガの説くマップを参考にして道を求める、すべてをこのように生きることよって、与えられた生命の喜びを享受して生きることができるようになると思います。

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