自分らしく生きる生き方そのものが人を健康にする

NVY-intro50

ナチュラル ヴォイス ヨガ入門 50

 和気愛会 2018年 4 月号 (No.223)


 人生の題材が何であれ望ましい結果は人生が豊かになること。
 そして、どの様な過程を経ようとも豊かな状態を得ているなら心身息が整っている。
 それは結果として得られたものかもしれないが、反対の過程もある。

 「心身息を整えるということそのものが自分の課題を実現していく」ということが分かるなら、課題のクリアを目指すと共に心身息を整えるということにもエネルギーを注ぐべきなのだ。

 呼吸と身体の使い方という観点から見れば、背すじが伸び、歪みが減り、肋骨が広がり、下腹が充実し、呼吸が深くなる。このことが心身息を使うすべてに上達し成功する秘訣だ。

 私のこの把握の出発は沖先生との出会いだ。 そこで「生命を信じ、人間として最高の喜びを得て生きる」という夢に燃えたのが始まり。 おかげで、紆余曲折ばかりではあるが面白くて仕方のない毎日を送っている。

 沖先生は、その人に必要なその人だけの個人修正体操を希望者だけに指導しておられた。 そのときには数人がアシストについて、筆記、録音、撮影などをしていたが、変わった体位を取る体操を次々に繰り出してこられるので、受けている人も大変だけれど、記録係りも間違えないようにと必死だった。

 ある時、このアシスタントの一人として筆記をしているときに、「木村、オレが何をしてるか分かるか、肋骨を見ているんだ」と教えてくださった。 要は本来のより深い呼吸ができるように呼吸を正す指導をされていたということだ。

 余談だけれど、沖先生がある著名な書家の個人指導をしたときの話を思い出した。

 自分の描く真っ直ぐの縦一文字に満足できなくて、長年求め続けてきたその方が沖ヨガ道場に来られ、身体の歪みや使い方を修正する個人指導を受けたところ、自分でも満足できる縦の線をスッと引くことができたという。

 今までどうしてもできなかったことが全く別のアプローチであっという間に出来るようになったその書家は、「私は努力を重ねてきたけれど今までいったい何をしてきたのだろう」と新たな気づきを得られ、大層感謝して帰られたということだった。体の歪み、呼吸の歪みが筆の動きの邪魔をしていたということだ。

 何が障壁になっているのか、見える人には見える。 観点を変え、的を射ることが出来れば解決できることも多い。 でも、そうして解決すればまた次の課題がある。 全てにおいて、終わりなど初めから無い。 私も毎日毎日少しづつ、身体の使い方、呼吸の在り方、心の問題、色々なことに小さな気づきがある。 本当に毎日毎日ある、しかし、終わりが近づくどころかどんどん遠ざかっていくばかり。

 「ああ、こんなことが出来るようになった」と喜んでいるとすぐ次の課題が生まれる。 そしてそれは多くの場合長年積み上げてきた固着した歪みや使い方の癖の上に成り立っている問題だ。 でも一つ気付いてその問題をクリアできた時には、その分 呼吸が深くなり、その分身体と心が楽になっている。

 毎日のように、いや毎週くらいかもしれないけれど、新しい体操や呼吸法を考えては、多くの方にやってもらっている。 新しいといっても、特に真新しくはないのかもしれない。 でも今まで、多くのヨガの指導者からも他のボディワークの方たちからも聞いたり教えてもらったことのない、自分なりに編み出したものだから、私にとってはとても新しい。

 もちろん、やっているうちに、これはあの人の言っていたことと同じことだとか、あの人は誰かの真似をしていただけで自分では分かっていなかったんだな、などといったことを思うことがよくある。同じ人間、同じ構造を持って生まれているのだから、突き詰めていけば結局同じところに行って当たり前なのだろう。

 自分にとって新しいものを生み出すということはそれを生み出す必然性や必要性があって、目的やイメージがはっきりしているからこそ、そのためのノウハウが湧いてくる。 そして私のそれは単純明快、簡単だ。

 私たちは、生きている限り伸びのびと生きていたい。
それそのものを実現しようとするのだ。 重圧も殻もみんな 押し砕き破り、自分を中から拡げる工夫をするのだ。

 それは心の問題かもかもしれないし、身体の使い方かもしれない。 結果として、意識的に豊かで伸びのびとした状態になるということだ。 それには、伸びのびしている時の身体や呼吸がどうなっているのかを観察し、分かったらそれを再現できるような能力を身に付ければいいのだ。

 結論から言えば、それは伸びやかに高らかに笑っているような状態のこと、メソメソと泣いたり、消極的な心に支配されているのと反対の状態だ。
 これを自分の意識で生み出すことが出来れば、外の状況にかかわらずに伸びのびとした状態になれる。 私の体験でも“なれる”と言えるし、師もそのように言われ、また多くの実践者の語るところでもある。

 それなら伸びやか高らかに笑っているときにはどんな呼吸の状態、どんな体の使い方になっているか。これを考えて実践すればいい。 これもまた答えは単純明快。

Ⓐ 肋骨が固まらず、柔らかく広く高く保たれている。
それは、いつでも息が十分に入ってこれる状態であり、息が多く入っても胸の固くならない使い方ができている状態だ。 

Ⓑ そのためには、背骨に力がこもることで肋骨が拡がり、胸郭が高く広がっている。

Ⓒ それに対して横隔膜が肋骨の広がりと連動して大きく息の入るスペースを確保し、同時に吐く息に対しては拮抗して働き、息をコントロールしている。

Ⓓ そのような一連の働きに全身が協力している。

 これを実現するための色々なアプローチがあることだろう。
座禅も武道も他の芸道もみなこの呼吸の状態を身につけることが眼目の一つだし、心の置き方ややり方によっては普通に生活しながらでも実現していけることではある。しかし、根本の気の流れが違う方向を向いていると、どんなアプローチを取ろうといくら努力をしてもうまくいかない。当然声や歌でも全く同じことが言える。 この欄では呼吸体操を使ってその基礎的な力を得る方法を紹介している。

前月号では、
① まず重力に逆らうような体の使い方を思い出す。
思い出すといったのは、子供の頃は誰もがやっていたことだからだ。

② 次に体の中身が引き上がるようにピョンピョン飛び跳ねる感覚を養う。

③ そして、胸が高く肋骨が拡がったまま呼吸できるようにし、お腹など肋骨よりも下を締めて内臓を引上げて吐き、

④ その力を緩めることで息が下向きに流れ込んでくる感じを体得する。 どれもこれも、誰もが子供時代の元気な時にはやっていたことだ。

 そして、この状態を誰もが理解できる例えでいえば、伸びやかにアッハッハ~と笑っているときの状態ということだ。

 この、④の下向きに流れ込んでくる感じの息の流れ方は、図のように、太いパイプがお腹の一番下にまで入っていて、柔らかい霧のような息が鼻からパイプを通って入ってくる。

下向きの息

 吸い始めはまず一番下から満たされてくる。
 入ってきた霧(空気)は下からだんだんレベルが上がってきて胸の最上部、鎖骨のところまでいっぱいに満たされる。

 頚椎まで背骨が締まってくると、気(息)は首から頭にまで満たされる。

そして③に戻り、肋骨が高い(胸骨の先端が高い)まま息を吐く。 ここまでできれば、先月予告した次の課題だ。

 このような呼吸の時、すなわち、背骨の伸び、肋骨の高さ、心の気持ちよさを維持したまま息を入れるには横隔膜を下げる必要があるし、安定した心の状態を維持するには 横隔膜を意識的に下げて、吸った息の圧力を胸ではなく、お腹で受け止め、胸の圧力をゼロにすることが必要だ。

 胸の力を抜くというのはこのことであり、相対的に腹圧が高くなることで体に息を保つことが出来る。 (声のことでいえば、この状態にならなければ喉の開いた声を出すことはできない。)

 次に息を吐くが、もし上述した状態から肋骨を引き上げている働きが緩まれば胸郭がしぼんで息が出ていくが、この吐き方では息のコントロールができない。 息即ち気をコントロールするには、肋骨は吐く時も柔らかく弾力のあるまま広がっており、横隔膜が息を吸う時のような働きで息の圧力を胸からお腹の方に移していることが必要だ。 この時は肋骨が拡がったまま横隔膜を下げている。

 これは寝ているときのように横隔膜自身が働いて下がることにより吸気が生じている。 背骨に力がこもることで高く広がった肋骨と下がる横隔膜が拮抗(協力)し合って吸気が生じている。このような空気の入り方で容積が増えると、体の中の空間が広がっているように感じられる。

 横隔膜が働くことのできる、このような全身の使い方が重要なので、⑤ 吸気を使って横隔膜を下げる働きを高める “スイッタリー”と呼ばれる呼吸法をする。

 この呼吸法は舌を筒のように丸めて口から出し、丸めた舌をストローのように使って息を吸い入れる。舌をうまく使えない場合は、唇を尖らせて突き出し、やはりストローで息を吸い入れるような感じで吸う(この場合は舌を下唇か下歯の裏に付ける)。 背筋を伸ばし、肋骨が高いまま、顎を引き、顔を前に出さず、頭を体幹に引きつけて、息が下向きに入ってくることを感じながら行うことが大切。

 舌や唇で息に抵抗を付けて吸い入れるが、抵抗の強さは最初は少なく、慣れるに したがってある程度強く、気持ちの良い範囲でやる。
 
 肋骨を拡げ高めるのと横隔膜を下げる働きとの連動が胸腔を拡げることで息が入ってくる。息が首の後ろに当たるような方向に吸い入れるが、体の中では上にも下にも両方に拡がるように息が流れ込む。吸い入れた後、肛門を締め、骨盤底筋を締めて息を止め、腹圧の上がった状態で息を止める(クムバクする)。苦しくならない程度でやめて、お腹に意識を置いたまま鼻から吐く。 それでは試して見てください。



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