自分らしく生きる生き方そのものが人を健康にする

NVY-intro49

ナチュラル ヴォイス ヨガ入門 49

 和気愛会 2018年 3 月号 (No.222)


 いつでも完全呼吸をしていることが豊かに生きるためのコツだ。
 完全呼吸というのはお腹も胸も、背中も脚も全身を使って呼吸をしている状態だ。ただ深く幅の広い呼吸というだけではなく、吸う息の中に吐く息があり、吐く息の中に吸う息があるという状態の呼吸のことだ。

 具体的に言えば、いつでも息の入って来れる空間を生み出すための広がる力が、息を吐くための力と拮抗し合っており、広い体感空間を維持したまま呼吸を自由にコントロールすることのできる、良い気分でいる状態だ。

 この息の入って来れるスペースが大きく広い状態で生きていたいのだが、これを力で広げるのではなく、上下前後左右にバランスよく自然にやわらかく広がっていることが大切で、それが体感空間の広がりを感じているということだ。

 この空間は、「体感」と言っているのだからもちろん身体が感じているのだけれど、同時に心の感じている状態でもあり、気持ちが楽で広く、大きくてゆったりとしている。 上に向けて広がれば明るく伸び伸びしているし、下に広がればゆったりと安定安心した気持ちになる。前後左右にも広がればそれに応じた心の広がりを生み出し、それが物事を捉える受け取り方を変える。

 頭の理解だけで心が変わることはなく、心が広々とした寛容な受け取り方をするために必要な身体と呼吸の状態がある。 そのため、ヨガでは心と身体と呼吸の三つを一体のものとし、心身統一の鍵として三密と呼んでいる。

 この体感空間の広い深い呼吸の状態を得るためには、肋骨が高く広がっていること、そしてまたそのためには背筋(せすじ)が伸びて足の裏から頭頂までが上下に伸び、肩の力が抜けて肩甲骨が締まり下腹が引き締まることが必要だ。そして、上下に伸びて広がる働きに対して拮抗するように、身体を中心に引き寄せて締める働きで伸びる力とのバランスが取れて安定した状態になることが必要だ。

 私達は常に重力に対して逆らって生きているので、上下の働きが一番強く、まずその意識と働きを養うことが大切だけれど、左右や前後の伸びと締まりの働きも同じように拮抗して働いている。それらが満遍なく働けば身体は柔らかい風船のように膨らみ、身体も心も大きく感じられる。しかし、その満遍ない膨らみが萎むと心も身体も膨らみ方に偏りが生じてくる。その偏りが身体を歪ませ、身体に無理を生み出すことになる。

 この偏りの原因は様々で内臓や脳の問題、外傷などから身体のどこででも生じるが、心や身体の使い方から生じることも多い。その歪みの癖が身につくと元になった原因がなくなっても歪みは戻りにくい。

 結果としての歪みは原因にもなり、姿勢、内臓の状態、気分、生活習慣、好み、・・・ 色々な生きる全てに影響を与える。しかし、偏らない膨らんだ呼吸を繰り返し身につけることでその歪みから解放されることはできる。

 自分の中から生じる歪みは、多くの場合上下に伸びる働きが不足することが一番の原因だ。 充分に空気の入った風船は歪みなく丸く膨らむけれど、半分萎んだ風船は折れたり曲がったりして歪みが生じる。

 身体の歪みも同じような感じで生じる。バランスよく充分に上下に伸びていると、肋骨が高く広がり、横隔膜が下がり、息が身体に入りやすくなり、歪みも生じにくい。
 これらの感覚を追求することでより深い呼吸を身につけ、いつでもどこでも完全呼吸をしている状態を維持する力が身についてくる。

 これまでにも色々と書いてきたけれど、具体的に何をどのようにやればそれを実現できるのか、私なりにそれを表現したいと思い、こんな記事を毎号書いている。

 メソッドとしてDVDにすればいいのかもしれないと思ったこともあったけれど、こうすればああなれるのかと、ただ薬やサプリの効能書きと同じように扱っては結局何の役にも立たない体操に成り下がってしまうことになるので、そのやり方は1年以上前にあきらめた。

 でも具体性の少ない理屈だけ話しても実際にどうすればいいのかわかりにくいことだろう。毎回書いている理屈から自分のやり方を見つけるための考え方や感じ方を見つけるために、同じ理屈をもう少し具体的に表現したい。

 それでは、今話しているような上下に伸びる気を生み出すにはどうすればいいのか、順を追って書いてみる。

 まず僕達は地球の重力の中で生まれ育っているから、この重力に逆らう働きが一番の基本だ。身体の構造、すなわち、ここに至った進化も重力に逆らう働きと共に生まれて来ているからだ。そのため、重力に逆らう働きが弱ると身体は多くのトラブルを抱えることになる。ところが、私達の多くが、20代30代を境に伸びる働きを弱らせ、歳と共に失っていく。

 これこそが 私達が生き生きとした人生を失う最大の理由だが、多くの人がそのことに気づいていない。そしてそれを老化と呼んで誰もが避けられない不運のように捉えて生きている。
 本当のところは、老化ではなく、使わない機能は身体が不要と見なしてその働きを失ってしまっただけのことで、使いさえすればまたすぐに復活するのだ。

 立つことによって背骨に無理が掛かかる、という理屈で、背骨の故障は人間の宿命だという学者が多いようだが、これは大きな間違。 多くの老化論と共に人間の気力を失わせる間違った推論だと私は思っている。

 重力に逆らって進化し、成長し、そのような体になっているのに、その重力への逆らい方が減ることにより異常が生じる、と考えるべきで、僕達は重力に逆らっていて丁度良い身体を持っているのだ。

 子供の様子を観察して見ると何が必要かよく分かる。生まれてから充分に成長して運動能力を獲得するまでは、放っておいても伸びる働きを高めよう高めようとしている。保育園や幼稚園で子供たちを見ていると、いつでもピョンピョン飛び跳ねて、足の裏で地面を押し、上体を引き上げて上下に伸びる気を生み出している。

 成長期を過ぎて、もし伸びる働きが減ってきていると思うなら、子供のように飛び跳ねる働きを養えばいい。

 飛び跳ねるというのは、ただ足の力で跳び上がったり着地したりするのではなく、頭頂で天を突き上げるような、全ての背骨が重力に逆らうように伸びる働き、肋骨が高く引き上がる働き、またそれらが働くために不可欠な重心を上げる作業即ち、下腹を引いて上に巻き上げ、内臓を引き上げる働き、それを支える肛門や骨盤底筋を引き締める働き、またそれを支える脚の内側や足の裏が地面を捉える働きなどと、全身が協力して働くことが大切だ。

 そして、それらが統一して一つの動作として働くためには、心が嬉しさに飛び上がるような気持ちを持って、子供のような屈託ない気持ちで吐く息に乗せて跳び上がることがもっと大切だ。

 ただ高く跳び上がりたいときには吸う息で跳ぶ方がうまく跳べるが、全身的な呼吸力と共に伸びる力を養うためには吐く息で跳ぶ方がいい。

 身体の中が充分に動いて伸びる機能が復活すると、呼吸が柔らかく深くなってくる。 これがうまくいかない人の場合は工夫が必要だ。 肋骨は背骨が伸びることで引き上がられて広がるが、同時に内臓を引き上げる働きが重心を上げて跳び上がることを助けている。

 身体の中も一緒にピョンピョン動けばうまくいくが、これを感じにくい人は、まず肋骨を引き上げておいて、内臓を引き上げる働きを養うと分かりやすい。 肋骨を引き上げることそのものが難しい人もいる。身体の使い方の把握度は人それぞれだけれど、ここから始めたらどんな状態の人でもレベルアップしていけるというやり方を考えてみた。

 *両手を挙げてできるだけ高く伸びあがり、肋骨を引き上げたまま胸に息を入れると、上肺部にまで息が入り、肋骨がより引き上がった状態になっている。この肋骨の高さを維持したまま動かさずに息を吐いたり吸ったりする。この時、吐く時にお腹が引っ込んで身体の中身、すなわち内臓を押し上げ、反対に吸う時にはお腹が膨らむように内臓が下がってくる。これがうまくできるようになると、胸骨の先端が引き上がり、息が鎖骨のあたりまで入ってくるように感じられる。これで多くの人が最初の段階をクリアできるだろう。

 しかし中には、この胸の真ん中の先端が引き上がるという感じも分からないという人もいる。その場合は*印の「両手を挙げてできるだけ高く伸びあがり、肋骨を引き上げたまま胸に息を入れる」というところを、片手でやって感じをつかむといい。右手を引き上げれば右の上肺部、鎖骨の辺りまで息が入る。そして左右どちらもできるようになれば、両手を挙げてやったときに真ん中の胸骨の先端が引き上がり、上肺部全体に息の広がりを感じやすくなる。

 ただし、これは決して胸で息をしているわけではない。 まずは胸を拡げて高く引き上げたまま、吸ったり吐いたりでき、吸う息のときに息が下向けに入り流れ込んでくるような感じをつかむための方法だ。

 今回の話をまとめると、
①まず重力に逆らうような体の使い方を思い出す。
②次に内臓などが引き上がるようにピョンピョン飛び跳ねる感覚を養う。
③そして、胸が高く肋骨が拡がったまま呼吸できるようにし、お腹など肋骨よりも下を締めて内臓を引上げて吐き、その力を緩めることで息が下向きに流れ込んでくる感じを体得する。

ここまでできるようになったら次の段階は来月号で。


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