クムバク力
クムバク力 とは
クムバク
ヨガの呼吸法にはクムバクという作法があります。
クムバクは息を止めるということですが、ただ息を止めても酸素不足になるだけでなんの意味もありません。
しかし、正しくクムバクをすると体中に酸素を行きわたらせて体を調えるだけでなく、
心を落ち着かせ、意識を拡げ、丹田力を養い、統一力、集中力を高めるというとても素晴らしい効果があります。
私たちの日常の生活の中でも、こらえる時、集中する一瞬、息を止めていることがあります。
また、深く静慮するときにも息を止めることがあります。
この時の息の止め方は重心を下げて気を下げ、体を安定させ、
また、うわついた心を引き下ろして集中力を高め、心を安定させています。
誰もがこのクムバクを日常である程度使っていますが、意識的にこの働きを高め、
またいつでも使えるようにすると、体の力をまとめて一つにして使えるようになり、
運動能力を高めるだけでなく、集中力を高め脳波を安定させることができます。
しかし、ビックリした時にも息が止まることがあります。この時は気が上がったまま息を止めています。
この息の止め方は練習してはいけませんが、気を下げる方の息の止め方を意識的に行うのがヨガの呼吸法で使うクムバクです。
この鍛錬が心身の力を高めるのに絶大な効果をもたらします。
集中力を高め、安定力を高め、心身を統一するためにこのクムバクを使うのです。
そしてクムバクのやり方をマスターすれば、これを日常生活に応用していきます。この応用する力が大切なのです。
この力が自己実現能力であり、他との和合能力であり、心豊かに生きるための必須の力なのです。
クムバクのやりかた
それではクムバクのやり方を簡単に説明しましょう。
まず大きく息を吐き、次に十分に息を吸い、
息を止める時に肛門を締め、肋骨が高く広がったまま腹圧を高め、全身に息の広がり(空間)を感じる。
意識を臍下丹田(ウッディアーナ)に置き、しばらく息を止め、そのまま肋骨が高く意識の広い状態を保つ。
苦しくなる前に、態勢や意識を保持したままゆっくりと息を吐き、また吸い、そこでまた息を止めます。
というように苦しくならないようマイペースでゆっくりと続けます。
(息を止める時に少し鼻から息を抜いて胸に力が入らないようにすることもよい)
言葉でもっともっと詳しく書くこともできるかもしれませんが、それはあまり意味がありません。
言葉は結局感じ方を伝えることができませんから、概略を聞いて、それを自分の生命(いのち)に訊きながら試し、
気分という尺度をたよりに時間をかけて発見するか、または師匠について直伝で学ぶしかありません。
自習をするなら、ナチュラル・ヴォイス・ヨガの本に書いたように、色々なクムバク体操をすることが効果的です。
毎日やればクムバクの仕方がわかってくることでしょう。そして、そのクムバクを日常に生かします。
クムバク力(りょく)
次にクムバク力の話です。
いつもクムバクをしている時のように気を下げ、脳波を安定させ、意識の広い状態を維持する力を《クムバク力》と呼んでいます。
さて、息を止めるのがクムバクなのに、それを日常に生かしたらずっと息をしないのかという疑問が出てきますが、そうではありません。
正しくクムバクをして(息を止めて)意識が広がり、ウッディアーナに力がこもり、脳波が安定したら、
それらの状態を変えずに、息を吸ったり吐いたり、生活をしたり、仕事をしたりということをするのです。沖ヨガではこれを《すべてを動禅として行う》と表現しています。
この力が《クムバク力》です。いつでもクムバクをしているような呼吸の状態を生み出し、
安定力を高めることが自在にできるようになることが、《クムバク力が高い》ということです。
声についてを全部読む方は → 母音の話